こんなことを書かれて。。嬉しい。。

http://book.asahi.com/bunko/TKY200810060198.html

■しなやかな民衆史

 劇団燐光群を主宰する坂手洋二(1962年岡山生まれ)の完本「沖縄三部作」。シナリオとは、一回性の舞台とはまた別の宇宙で硬質の輝きを放つ文芸作品なのだなあと、あらためて感じさせる。

 「海の沸点」は、読谷村(よみたんそん)でスーパーを経営するショウイチという男を軸に、沖縄国体開会式での「日の丸焼捨事件」(87年)から、駐留軍用地特別措置法改定(97年)まで、国の同化政策と恫喝政策に引き裂かれた沖縄の10年を群像劇に仕立てる。「沖縄ミルクプラントの最后」は、基地内雇用にも、思いやり予算での雇用と米民間会社の雇用があった二重構造を描き、「ピカドン・キジムナー」では、ある一家の姿を通して、沖縄返還時の様子と、在日の人々よりも認定が遅れた沖縄出身者の被爆問題を取り上げる。

 どれも根幹にあるテーマは重い。が、俳優によって発語されることを前提とした「わたし」や「あなた」、「父母」や「隣人たち」のオーラル民衆史である点が、このシナリオに独得のしなやかさ(後引き粘度)を与えている。小栗旬サマのおかげで女子高生が買いまくったカミュの『カリギュラ・誤解』(東京・シアターコクーン)。本書にもそんな奇跡は起こらないものか?