旬君「ムサシ」インタビュー @ぴあより。。

http://www.pia.co.jp/interview/66/index.php

舞台『ムサシ』で佐々木小次郎を演じる小栗旬にインタビュー。この舞台にかける想いから、役者・小栗旬を客観的に語ってもらった。
Text●徳永京子 Photo●源賀津己 Hair&Make
●石田章一(Climb)Styling●田崎健太郎



――脚本が予定より遅れているとのことですが、小栗さんは今、どんな気持ちで稽古場にいるのでしょうか?

特に焦りとか不安とかないんですよ。ぶっちゃけね、ここ2年ぐらいずっとギリギリの状況なんです。次の日の仕事のために前の日を生きる、明日の仕事のために今日出来ることをとにかくやる、という。それがいいことなのか悪いことなのかわからないですけど、そのとき自分が出来ることを精一杯やるしかないので、たとえ台本が完成していなくても、自分がいまやるべきことをやるだけって感じで。と言うかむしろ、遅れてくれてて嬉しいかもしれないです。せりふを覚えるのはどっちかっていうと早いから、出演者が同じ状況でスタートするなら、みんなと同じペースで覚えればいいってことで、ちょっと気が楽(笑)。これが「○日までに全部覚えて来い」と言われたら、完全にパンクだと思いますね、そこまで仕事が詰まっちゃっているんで。

──「井上ひさし書き下ろし、蜷川幸雄演出、藤原竜也小栗旬が主演」というパッケージはビッグネーム揃いで、世の中では事件です。そのあたりは意識していますか?

今のところ全然ないです。本番が始まってみたら感じるかもしれないですけど。こういう座組みだから頑張るかっていうと、じゃあいつもは頑張ってないのかという話になると思うんで。いつも一所懸命やってるつもりだから、変な気負いみたいなものは今のとこないですね。

──先ほどの「明日の準備を今日やることの連続」というお話ですが。以前それを伺ったとき、そういう状況に苛立ちを感じていらっしゃったと思うのですが、今は少し様子が違う印象を受けました。

基本的には嫌なんですよ、こういう状況は。「この仕事が終わったら次、それが終わったら次」が1番いいですけど、なかなかそうきれいに分かれてくれない。(スケジュールが)重ならない人もいるから、なんで俺にはそれが出来ないのかなとも思うけど。でもやっぱり、おもしろそうな話をもらって、スケジュール的には少しきついけど、何とか頑張れば行けると思ったら(オファーを)受けちゃうんですよ。結局、こういうマゾ的な状況をつくってるのは自分ということですね。

──自主的に招いた忙しさでもあると。

だから人の2倍頑張らなきゃいけない。恥かいて1番辛いのは自分ですから。もちろん誰だって失敗して恥をかくことはあると思うけど、僕らはプロとして仕事を受けているわけで、それで失敗したときの恥のかき方って半端じゃないだろうとは考えます。仕事に大小はないですけどね。

──体力的にも精神的にも自分を追い詰めて、それでも続けている理由は何ですか?

……好きだし、楽しいと思うから。もしそれ(忙しさ)で、たとえば大河の『天地人』に出たから『ムサシ』で声が枯れちゃった、ということになれば反省しますよ、プロ失格だから。だって結局は観てくれる人たちのためにやってるわけで、舞台にしろ映画にしろドラマにしろ、お客さんが「こんな完成度の低いものを見せられたらたまらない」と思ったらおしまいなんです。そうならないために出来るだけのことをする。どうやったらその作品がよくなるか、おもしろさが加速して、相手役も魅力的に見えて、お客さんが満足できるかを考えていくわけです。

──自分が好きだから、と言いながら、自分のためだけではないんですね。『ムサシ』ですが、もしかしたら稽古時間が短くなって、小栗さんが満足できる完成度にならない可能性もあるわけですが。

それはでも、蜷川幸雄って人はプロだから。なんとしてもあるレベルまで高めたものをやらせようとするでしょ。そうしたら、何としてでも付いてくのが俺らだと思うから。そこはもう信頼してます。

──小栗さん、将来的に演出や監督をしてみたい気持ちはありますか?

あります。本格的に演出家とか監督の仕事をするのはまだ先でいいと思うんですけど、とりあえず1回、今の自分の感覚でどんなものがつくれるのか試してみたい。舞台は無理ですね、今のところ。やっぱり舞台の演出って、映画よりも総合的なものが必要だと俺は思うので。

──被写体でいながら、「自分だったらこう撮る」という意識はありますか。

いつもです。だから俺は役に没頭できるタイプじゃないんだと思うんですよね。爆発的集中力で役に憑依するような芝居をしたいと思うけど、出来ないですもん。(藤原)竜也なんて完璧にそっちだと思いますけど。どうしたらそうなれるのかという努力はずっとしてますけど、いつも客観的に自分を見てる自分がいる。それは仕方ないですね。


藤原君のインタビューはこちら
http://www.pia.co.jp/interview/65/index.php