芥川龍之介。。「藪の中」

   
情報を入れないで映画を観たい方は読まないで下さいね。。
TAJOMARU」は「羅生門」「藪の中」とは違うというので。。
原作は見ても 見なくても どちらでもいいかと思います。。


読みたいけれど。。まだ。。という方に。。



芥川龍之介の「藪の中」は今昔物語の巻二十九を基に。芥川龍之介が 創造した作品。。短編小説です。。。。。



【ごく、簡単にいうと。。^^】

男の死体が発見された。。。。
誰が殺したのか。。
発見者。直前の目撃者。盗賊を捕まえた者。親。が証言します。。。
そして。。当事者も言います。。。。
盗賊。妻。死んだ男=夫も。巫女の口を借りて証言します。。
3者の証言が食い違います。。
みんな。。いきさつが違って。。自分が殺したと。。(夫は)自害したと。。証言するのです。。
(食い違う証言のままで。 真実は。。読者に解釈を委ねたまま)終わります。。

〜〜〜〜〜〜〜〜

基になった「今昔物語」では男は殺されていないとか。。

芥川龍之介の「藪の中」では男は殺されてしまう。。死者としての証言する。。

黒澤監督の「羅生門」。。

TAJOMARU」では。。男は直光=旬君に当たります。。


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

【もう少し。。言うと。。。】


第一発見者の木樵(きこ)りが 死んだ男が 烏帽子をかぶったまま仰向けに倒れていました。。縄が一筋と櫛が落ちていたと。。状況を証言します。。

男を前日 見かけたと。。男と一緒に女と馬もいたと。。旅法師が証言します。

自分がとらえた 盗賊、多襄丸のことを説明し。。死んだ男の状況から。。殺したのは多襄丸に違いないと。。証言します。。。

女の親が娘の気質を説明し。。娘が行方不明で心配だと 多襄丸が憎い。。と。。。

盗賊の多襄丸が 2人をだまし。。女を襲った。。男を殺すつもりはなかったけれど。。去ろうとすると。。女に。。「あなたか、夫か。。どちらか死んでくれ。。。2人の男に恥を見せるのは。。死ぬよりも辛い。。。生き残った男に連れ添いたい。」と言われた。。男を殺すにも。。卑怯な殺し方はしたくない。。男の縄を解いて。。太刀打ちをしろと言い。。男を殺したが。。女はその間に逃げてしまっていた。。男を殺したのは自分だと白状する。。。


男の妻が懺悔する。。。盗賊に襲われ。。縄をかけらられた身体で。。 木に縛られた夫のもとへ。転ぶように走り寄ると。夫の目に。蔑んだ冷たい光を感じ取り。。叫んだきり気を失ってしまった。。気がつくと。。襲った男は居なくなっていた。。夫に「もう一緒には居られません。。私は死にます。。あなたも 私の恥をご覧になり。。このままあなた一人を残すわけにはいかない。。」といい夫を刺し。。気を失ってしまった。。
気が付いた時には夫は死んでいた。。。自分も死のうとしたけれど。。出来なかった。。。


巫女の口を借りて 死んだ男が話す。。。妻を奪われ。。盗賊の話を信じたりしないよう。。妻に必死で目でつたえた。。けれど。。妻は盗賊に心を奪われたように見え。。更に。。あの男を殺して。。と何度も叫ぶのを聞く。。多襄丸に 縛られていた縄は切られたが。絶望し。。自害したと。。いう。。





@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


(こんなお粗末なものにするのも。。芥川龍之介の文章をそのまま載せるのも(下に)。。どっちも 気が引けてしまいますが。。許して頂いて。。)

証言は食い違い。。3人がみんな自分だという


いろんな解釈が出来。。読者にゆだねられる。

数多くの解釈がなされ。。国内外でも作品が作られて。。


それを基につくられた 黒澤監督の「羅生門」は 観てないのですけど。。
調べてみると。。食い違う証言。。。一部始終を見ていたという人物(第一発見者)がいて。
それによって真実が明らかになると。。みんなが少しずつウソを言っていたらしい。。



TAJOMARU」はそのリメイクではなく。。多襄丸という名前だけ受け継いで。。時代も全く違う設定で。。




太宰治の生誕100周年で。。太宰治の本が売れるのは当然ですが。。

でも。。今年。。「TAJOMARU」のお陰で「藪の中」がブームになって本が売れれば。。。
話題になって大ヒットに繋がるかもしれないですね。。(*^-^*)



どんな壮大な ファンタジーでしょうね。。☆  



@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@




太宰治「藪の中」の一部 抜粋。。




検非違使(けびいし)に問われたる木樵(きこ)りの物語

 さようでございます。あの死骸を見つけたのは、わたしに違いございません。わたしは今朝いつもの通り、裏山の杉を伐りに参りました。すると山陰の藪の中に、あの死骸があったのでございます。
。。。略。。。



 検非違使に問われたる旅法師の物語

 あの死骸の男には、確かに昨日遇って居ります。昨日の、―さあ、午頃でございましょう。場所は関山から山科へ、参ろうと云う途中でございます。あの男は馬に乗った女と一しょに、関山の方へ歩いて参りました。
。。。略。。。


 検非違使に問われたる放免の物語

 わたしが搦(から)め取った男でございますか? これは確かに多襄丸と云う、名高い盗人でございます。もっともわたしが搦め取った時には、馬から落ちたのでございましょう、粟田口の石橋の上に、うんうん呻って居りました。
。。。略。。。



 検非違使に問われたる媼(おうな)の物語

 はい、あの死骸は手前の娘が、片附いた男でございます。が、都のものではございません。若狭の国府の侍でございます。名は金沢の武弘、年は二十六歳でございました。いえ、優しい気立でございますから、遺恨なぞ受ける筈はございません。
。。。略。。。

  *   *   *  *   *   *


 多襄丸の白状

 あの男を殺したのはわたしです。しかし女は殺しはしません。ではどこへ行ったのか? それはわたしにもわからないのです。まあ、お待ちなさい。いくら拷問にかけられても、知らない事は申されますまい。その上わたしもこうなれば、卑怯な隠し立てはしないつもりです。
。。。略。。。
 しかし男を殺すにしても、卑怯な殺し方はしたくありません。わたしは男の縄を解いた上、太刀打ちをしろと云いました。(杉の根がたに落ちていたのは、その時捨て忘れた縄なのです。)男は血相を変えたまま、太い太刀を引き抜きました。と思うと口も利かずに、憤然とわたしへ飛びかかりました。−−その太刀打ちがどうなったかは、申し上げるまでもありますまい。わたしの太刀は二十三合目に、相手の胸を貫きました。
。。。略。。。 



 清水寺に来れる女の懺悔

 −−その紺の水干(すいかん)を着た男は、わたしを手ごめにしてしまうと、縛られた夫を眺めながら、嘲るように笑いました。夫はどんなに無念だったでしょう。
。。。略。。。
わたしは夫の眼の中に、何とも云いようのない輝きが、宿っているのを覚(さと)りました。何とも云いようのない、−−わたしはあの眼を思い出すと、今でも身震いが出ずにはいられません。

口さえ一言も利けない夫は、その刹那の眼の中に、一切の心を伝えたのです。しかしそこに閃いていたのは、怒りでもなければ悲しみでもない、−−ただわたしを蔑んだ、冷たい光だったではありませんか? わたしは男に蹴られたよりも、その眼の色に打たれたように、我知らず何か叫んだぎり、とうとう気を失ってしまいました。
。。。略。。。

「ではお命を頂かせて下さい。わたしもすぐにお供します。」
 夫はこの言葉を聞いた時、やっと唇を動かしました。勿論口には笹の落葉が、一ぱいにつまっていますから、声は少しも聞えません。が、わたしはそれを見ると、たちまちその言葉を覚りました。夫はわたしを蔑んだまま、「殺せ。」と一言云ったのです。わたしはほとんど、夢うつつの内に、夫の縹の水干の胸へ、ずぶりと小刀(さすが)を刺し通しました。
。。。略。。。


 巫女の口を借りたる死霊の物語

 −−盗人は妻を手ごめにすると、そこへ腰を下したまま、いろいろ妻を慰め出した。おれは勿論口は利けない。体も杉の根に縛られている。が、おれはその間に、何度も妻へ目くばせをした。この男の云う事を真に受けるな、何を云っても嘘と思え、−−おれはそんな意味を伝えたいと思った。しかし妻は悄然と笹の落葉に坐ったなり、じっと膝へ目をやっている。それがどうも盗人の言葉に、聞き入っているように見えるではないか? おれは妬しさに身悶えをした。
。。。略。。。

 おれはやっと杉の根から、疲れ果てた体を起した。おれの前には妻が落した、小刀(さすが)が一つ光っている。おれはそれを手にとると、一突きにおれの胸へ刺した。
。。。略。。。