浜辺美波×北村匠海×北川景子×小栗旬×月川翔インタビュー✨


「君の膵臓をたべたい」浜辺美波×北村匠海×北川景子×小栗旬×月川翔インタビュー - 映画ナタリー 特集・インタビュー


「君の膵臓をたべたい」


5人全員が号泣!感涙必至の名シーンと2人1役の舞台裏

住野よるの小説を実写映画化した「君の膵臓をたべたい」が、7月28日に公開される。本作は、膵臓の病気を抱えた高校生・山内桜良と、彼女の闘病日記を見つけた同級生【僕】の関係を描く感動作。桜良役の浜辺美波と【僕】役の北村匠海DISH//)がダブル主演を務めた。さらに原作にはない12年後を舞台とした現代パートでは、【僕】役を小栗旬が、桜良の親友・恭子役を北川景子が務めている。

映画ナタリーでは本作の公開を記念し、メインキャストの浜辺、北村、北川、小栗、そして監督の月川翔による座談会を実施。完成作品を観た5人が全員涙したという名シーンや、2人1役を演じるのは2回目となる北村と小栗の演技について話を聞いた。さらに後半では、「12年前の自分を振り返って後悔していること」や、「浜辺&北村にアドバイスしたいことは?」というテーマでトークしてもらった。

取材・文 / 浅見みなほ
撮影 / 入江達也

自分の出ている映画を観て、こんなに泣いたのは初めて(小栗)

──先ほどの舞台挨拶では緊張気味だった浜辺さんと北村さんですが、少しほぐれてきましたか?(この取材は、完成披露舞台挨拶の直後に行われた。参照:北村匠海はファンキー?「キミスイ」完成披露で浜辺美波が第一印象語る)

浜辺美波 舞台挨拶の最後の桜吹雪で、大きな音が出てびっくりしちゃいました。



浜辺美波
北村匠海 僕もびっくりしました(笑)。でも桜吹雪のおかげでだいぶ緊張がほぐれましたね。

小栗旬 あんなに音出ると思わなかったよね。

浜辺 はい(笑)。

──試写会でも号泣する人が続出している本作ですが、皆さんが完成作品をご覧になった感想を教えてください。

小栗 自分の出ている映画を観て、試写室でこんなに泣いてしまったのは初めてです。前の席にマネージャーが2人座っていたので、泣いてるのがバレたくないなと思ってけっこうこらえていたんですけど(笑)。その2人がいなかったらもっとガッツリ泣いていたと思います。

──具体的にはどのシーンでしょうか。

小栗 匠海くん演じる【僕】が共病文庫を読んで「すみません、泣いてもいいですか」って言うシーン。原作でも好きな場面だったので「すごく難しいシーンだけど、どうやってるのかな?」と思って観たらまんまと泣かされちゃいました。

「君の膵臓をたべたい」より。
北川景子 私も同じ、【僕】が初めて声を上げて泣くシーンで泣きました。原作では「うおおおお」という文字が3行くらい書かれているので、どうやって表現するんだろう?と思っていたんです。私もマネージャー2人に囲まれて観ていたから素直に泣けなかったんですけど……(笑)。

小栗 マネージャーがそばで観てるの、よくないよね!

北川 そうなんですよ! すごく泣きづらい状況だったんですけど、心の中では【僕】と同じように慟哭していました。

浜辺 私もそこで泣いてしまいました。でも客観的に観て感極まる場面が多くて、皆さんが登場するたびにわーっと涙がこみ上げてきて。

──マネージャーさんは近くでご覧になっていました?(笑)

浜辺 隣でした(笑)。でも私は構わず泣いてしまいました。

──皆さん学生時代の【僕】のシーンで泣いてしまったそうですが、演じていた北村さんとしてはいかがですか


北村匠海
北村 実は完成作品を観て、僕もそのシーンで泣いたんです。あの撮影は、監督が【僕】の感情をうまく引き出してくださったので、僕も自然な芝居ができたと思います。

月川翔 勝負のシーンだと思っていたので、北村くんには共病文庫に書かれた桜良からのメッセージを事前に見せずに、本番で初めて目にしてもらいました。試写ではその場面だけでなく、北川さん演じる恭子が桜良からの手紙を読むシーンも泣きましたね。小栗さんと美波ちゃんの視線が合うところも、編集で何回も観てるのに泣いてしまって。それぞれに泣きどころがありました。僕、涙もろいんですかね?(笑)

いいものが撮れた、これはいい映画になるなって(月川)

──北川さん演じる大人になった恭子が、桜良からの手紙を読むシーンも見どころの1つです。


「君の膵臓をたべたい」より。
小栗 あのシーンでは、監督がモニターを観ながら泣いていて、カットをかけ忘れてしまっていたんですよ。僕らはそんなことも知らず、カットかからないなー?って(笑)。

北川 私も思ってました! (夫役の)上地雄輔さんも困っていたのか、涙を拭こうと演技を続けてくださいました。

小栗 でも北川さんがアドリブで「なんでこんなタイミングで……バカ」って続けてくれたんです。さすが! でも、僕どうしていいかわからない!と思ってました(笑)。

北川 恭子の学生時代を演じている大友花恋ちゃんは、前にも共演させてもらったことがあってよく知っていたんです。私自身の登場シーンは決して多くないんですが、彼女だったらこういう感じかな、彼女の演じる恭子ならこうやって強がるかな、と考えて出てきたのがあの言葉で。花恋ちゃんは、強がりの中に隠れた優しさのようなものも上手に表現するだろうなと思っていたので。

月川 あれを聞いて、「ああ、効くう!」と思ってさらに涙が出て。「カット!」を振り絞った感じでした。

小栗 僕は、そのあとに監督がガッツポーズしてる後ろ姿をチラッと見ましたよ。こうやって……(うつむきながら両手でガッツポーズ)。

月川 あ、見てましたか?(笑) いやもう、いいもん撮れた、これはいい映画になるなって。


「君の膵臓をたべたい」より。
北村 僕の泣くシーンもそうだったんですが、北川さんのシーンも、美波ちゃんの(手紙を読み上げる)声を聞きながらお芝居されたんですよね。最後のあの一言がアドリブだって聞いたときにはびっくりしました。

浜辺 本当に感動しました。桜良と恭子がこんなにも思い合っていたんだなと思うと、桜良としてもうれしかったです。


小栗さんが、僕の演じる【僕】に寄り添ってくれた(北村)

──北村さんは、「TAJOMARU」でも小栗さん演じる主人公・畠山直光の幼少期を演じていましたね。

北村 自分の初主演作でまた小栗さんと同一人物を演じることができると聞いて、本当にうれしくて。撮影中は一度しかお会いすることができなくて、役についてじっくり話し合う時間もなかったんです。自分が演じたものはどれくらいリンクできているだろうかという気持ちで観たんですけど、小栗さんがものすごく僕の演じる【僕】に寄り添ってくださって。現代パートのどこを観ても、僕の思い描いていた【僕】で。本当に、改めてありがとうございましたと伝えたいです。

──顔の雰囲気は違うのに、お二人が同一人物にしか見えませんでした。どのように撮影されたのでしょうか。


左から北村匠海小栗旬

月川 撮影の順番は、匠海くんを撮って、小栗さんを撮って、また匠海くんのパートに戻りました。小栗さんが匠海くんに寄せてくれたんです。撮影に入る前日、小栗さんが「匠海くん、感じさせる芝居とわからせる芝居のどっちで来てるかな?」ってポロっと言っていて、僕が「感じさせるほうです」って答えるくらいしかすり合わせ作業はしていないですね。それでもあそこまでのレベルに持っていってくださって。

北村 本当にありがたいです。

小栗 大人になった【僕】は、周りに比べて一番時間が止まってしまっている人間なんですけど、とはいえ12年の時間は経っているのであまり縛られすぎないようにしましたね。でも匠海くんのこの雰囲気は、何度か彼を見る中でわかっていたので。「自分だったらこうするけど、匠海くんだったらこうかもしれない」という考えの中やっていった感じです。あとは、普段の自分よりもちょっとだけ声を高くしようかな、とか。

──北村さんと同じところにホクロを描いたそうですが……。


「君の膵臓をたべたい」より。

小栗 それはメイクさんと「絶対にやるべきだよね」って話をして。やっぱり匠海くんのチャームポイントだし、12年経ってなくなっていたらおかしいですもんね。

北村 教師になった【僕】が黒板に字を書くシーンで、左利きの小栗さんが僕に合わせて右利きに変えてくださった話や、ホクロを描いてくださった話を聞いたり、監督から「小栗さんと匠海くんの【僕】は一致してるから大丈夫。このまま信じて演じきってほしい」と言ってもらえたのは大きかったです。

北川 私も試写を観て一番ビックリしたのはそこだったんです。小栗さんと北村さんって、実際に会うと全然違う人なんですけど、作品の中では同じ人にしか見えなくて。私の中の小栗さんは、最近の役のイメージかもしれませんが、硬派で重厚感のある方だったんです。でも今回、【僕】が歩いていくシーンでご一緒したときに、小栗さんの背中が寂しそうで。その背中を追いかけても、“小栗旬さん”ではなく【僕】にしか思えませんでした。小栗さんは本当にすごい人なんだなあって。

小栗 やったぜ(笑)。すごくうれしい。

北川 この間、小栗さんの舞台「劇団☆新感線『髑髏城の七人』 Season 花 produced by TBS」を観たんです。当たり前なんですけど、全然違くて(笑)。あの【僕】の背中はなんだったんだろう!?っていうくらい、風や水しぶきを浴びて男らしかったです。


北川景子
月川 猫背にしてって言ったわけではないんだけど、完全に感覚なんですよね。僕もあのシーンの数週間後に「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」の現場に行ったんですが、小栗さんの背中がめっちゃゴッツくなってました。

一同 (笑)

お芝居で空気が変わる瞬間を感じました(浜辺)

──浜辺さんは、小栗さん演じる大人になった【僕】と図書館での共演シーンもありましたね。現場でご一緒した感想を教えてください。

浜辺 本当に、お芝居で空気が変わる瞬間を感じました。お話ししたかったんですけど、すごく緊張してしまって本棚の陰にずっと隠れていたんです(笑)。小栗さんが隣の棚に来たら、次の次の列に隠れるみたいな……。

──(笑)。北村さん演じる学生時代の【僕】のあと、小栗さん演じる【僕】と対面していかがでしたか。


「君の膵臓をたべたい」より。

浜辺 桜良がずっと一緒にいた学生時代の【僕】を、小栗さんがそのまま演じてくださっていて、思いを受け止めてくださったような感じがしました。大きくなった【僕】を見られて本当にうれしかったです。

小栗 あそこは、観客がずっと【僕】目線で観てきた物語において、初めて「桜良がどういう顔で【僕】のことを見ていたのか」が明らかになるシーン。あの感動的な演出は「ちくしょう、監督うまいことやったな!」って思いました(笑)。

月川 そこが一番グッとくるポイントだと思っていたので、台本にない桜良と【僕】のシーンも撮っておいたんです。いい表情をしてくれたので、本当にうまくいったなと思ってますね。


「もう1回、あれぐらい笑ってくれないかな」と思う(小栗)

──では次に、小栗さんと北川さんから、本作で主演を務めた浜辺さんと北村さんについてコメントをいただけますか。


「君の膵臓をたべたい」より。

小栗 【僕】って受けの芝居が多くて、すごく難しい役だと思うんです。匠海くんは中学時代の自分が【僕】に似ていたと言うけど、本当に自然に演じていて。やり方によってはすごく嘘くさく見えてしまうキャラクターなのに、彼の中から自然に出てくるものがカメラに映っている。逆に言うと、匠海くんはこれからすごく元気な役をやるのが大変になるかもしれない。でも、ドラマ「仰げば尊し」ではヤンキー役をやっているし。素晴らしい俳優さんだと思いました。

北川 美波ちゃんもすごかったです。桜良っていう役はともするとあざとくなってしまったり、女の子に嫌われちゃいそうなキャラクターなんです。でも媚びているようにも見えず、説明的にもならず、女性から観てもかわいいと思えるお芝居をしているので。本当に難しかったと思う。


「君の膵臓をたべたい」より。
小栗 本当にね。間違いなく狙ってやっているんですけど、映画の冒頭を観ると「なんでこの子はこんなに大きく笑うんだろう?」という気持ちになる。最初は違和感があるんだけど、桜良がそうやって笑っていた理由がわかると、「もう1回、あれぐらい笑ってくれないかな」って思っちゃうんですよ! ……みんなで褒め合ってると恥ずかしいね(笑)。

一同 (笑)

「やりたいです!」って言うのはいいことだよ(北川)

──本作では、学生時代の【僕】と12年後の【僕】の姿が描かれました。 小栗さん、北川さん、月川監督がご自身の12年前を振り返って、浜辺さんと北村さんに「これはやっておいたほうがいい!」というアドバイスはありますか。

小栗 たぶん2人はきちんとやっていると思いますけど、僕は本当に、あの頃もう少し勉強しておけばよかったと思ってます。

──それは学業としての勉強でしょうか?

小栗 そうです。学生の頃って、とにかく知識を吸収できるじゃないですか。今になって一生懸命知識を入れようとしても、あの頃のように柔軟にはなれないですし。僕はなんであの頃、ママチャリにしか乗ってなかったんだろう?って(笑)。

一同 (笑)

小栗 高校生の頃はどこへ行くにもママチャリ。あとスケボーしかやっていなくて、ろくに勉強もしてなかったのが悲しくなりますね。


小栗旬
北川 美波ちゃんも北村さんもちゃんと自分の言葉で作品を説明できて、この歳で自分の考えをきちんと持っているから、アドバイスもいらないと思うんです。そのまま立派な大人になれるはずです。私の若い頃は、とにかくとがっていたので(笑)。

小栗 その頃の北川さんに会ってみたかった!

北川 その頃に会っていたら、小栗さんは口を聞いてくれないかもしれない(笑)。17歳でお仕事を始めて、モデルの世界で勝ち残るにはとがらないとしょうがない環境だったんです。19歳になったら、次は女優として認めてもらいたい、モデル出身と言われたくないってまたとがりまくって。今思うと、そんなにとがらずにもっとうまくやれなかったのかなって反省してます。当時はオーディションに行って、本当はすごく受かりたい!と思っていても、それを出したらカッコ悪いからすまして自己紹介しちゃうんです。「この役に受かったらどうしますか?」って聞かれて、「受かったら、がんばります」みたいな(笑)。

月川 そういう子、いるなあ!

小栗 わかるー! 僕もそんな感じ。「俺、そんなに前のめりじゃないです」って雰囲気に見せようとしてた。ときどき「僕は前の現場でこういうことをやってきたので、この作品ではこんなことに生かせると思います!!」みたくガツガツしてる人を見ると「もうこの人がやったらいいじゃん」ってヘソ曲げて(笑)。

北川 おんなじですね(笑)。なんでもっと素直に「この役がやりたいんです」「この台本に感動しました!」って言える自分じゃなかったのかなって、今でも後悔しているんです。だから2人には、やりたいことがあったときに「やりたいんです!」って言うのはいいことだよって伝えたいです。

浜辺・北村 ありがとうございます。

小栗 あとさっき2人と話していて思ったのは、今、失敗しちゃいけない社会になってるなって。僕らの仕事で言えば、NGを出す人イコール駄目みたいな空気になってる。不器用な人ってNGも出すけど、その人に時間を与えてあげて、失敗を許してあげれば、もっとよくなる瞬間がいっぱいあると思うんです。でも今はいろいろな状況を考えて、結果的にそういう人が現場から外されちゃう。そんなのよくないと思うし、2人にはどんどん失敗できる環境で学んでいってほしい。

北村 確かに、ちょっと失敗は怖いなと思うときがあります……。

小栗 そういう言葉が出るのは、大人たちに普段から「失敗するな」って言われてるせいだと思う。そういう人に対しては、足とかをこっそり踏んでいったらいい(笑)。僕らの頃は「そんな相手、ぶっ飛ばせばいいんだよ!」って言ってもらえたけど、今はそれも駄目そうだから……靴の踵に画鋲入れたりするのはどう? 画鋲はちょっと陰湿すぎるか(笑)。

北村 足をこっそり踏むくらいにしておきます(笑)。

北川 美波ちゃんは、カーッとすることないの?

浜辺 私は、マネージャーさんに愚痴を聞いてもらいます。


左から北川景子浜辺美波
月川 ぶつける場所があるなら、よかったよかった(笑)。失敗ができない世の中っていう話は、本当にその通りだと思う。12年前の僕は大学院に入った頃。先生の黒沢清さんに「この2年間はとにかく失敗しなさい。社会に出ると失敗は本当に許されなくなるから」と言われました。とんでもなくつまらない作品を作ったりしていたんだけど、あの時期があってよかったなって思えるんです。だから失敗を恐れずに進んでもらいたい。

浜辺・北村 はい!