さ1509064544*山田P「小栗旬はすごい俳優。「CRISIS 〜〜」で体を鍛え抜いた直後、当たり前のように痩せた顔色悪い石川に。日本では小栗さんくらい。」

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171027-00125832-the_tv-ent
10/27(金) 7:00配信


「BORDER 贖罪」主演の小栗旬


2014年4月期に連続ドラマとして放送され、規格外のスケール感と役者陣の演技、そして衝撃の“ラスト”が話題を呼んだ小栗旬主演ドラマ「BORDER」(テレビ朝日系)。


3年間の沈黙を経て、10月6日と13日には波瑠主演のスピンオフ「BORDER 衝動〜検視官・比嘉ミカ〜」が放送され、比嘉の“バックボーン”も明らかになった。

そして、10月29日(日)夜9時からは待望の“続編”となるドラマスペシャル「BORDER 贖罪」が放送。

そんな続編の放送を直前に控え、希代のヒットメーカー・金城一紀と共に「BORDER」シリーズを作ってきたテレビ朝日の山田兼司プロデューサーに、同シリーズの“これまで”、と、“これから”について聞いた。

ロングインタビュー前篇では、“これまで”についてを中心に語ってもらった。

■ ようやく続編を描けるときがきた

――3年前、2014年6月5日の連ドラ最終回以来、ファンの皆さんが気になっていた続編の存在。具体的にはいつごろから動き出したのでしょうか?

「BORDER」という作品は、いつの時期だったら続編をやりましょう!というのが難しかったんです。そもそも「BORDER」という企画自体、金城さんとしては“あのラスト”ありきの話でしたから。

オンエアは9話でしたが、プロット(あらすじ)自体はもっともっと多くて、それこそ16個くらいあったんですけど、1話と最終回は揺るぎなく「発現」と「越境」で決まっていて、その間のストーリーをどう並べて表現していくかが課題でした。何しろ連ドラは無限に放送枠があるわけではないので。

難しいのが、金城さんのプロットは16個あっとしてもクオリティーに全然差がなくて、全部面白いんです。おかげで泣く泣く省いたものがたくさんありました。それから9話へとつながる必然的な流れになったとき、本当に地上波のテレビドラマであのラストをやれるのか、というのが次の課題になりました。

あのラストをやるために連ドラを走っていく中で、あるタイミングで「この先(最終回の後)どうなりますかね?」って話をしていたんです。そのとき既に金城さんの中では、あのラストから続くストーリーの構想があって。私は具体的に聞いていました。

続編は、“振り子の反対側”に振り切れてしまった石川(小栗)を、みんなで引き戻そうっていう話にしたいんですよね、って仰っていて。ようやくそこが描けるときがきました。

――最終回後には大きな反響もありましたよね!

そうですね。終わった後には実際すごくたくさんの反響がありました。続編をやりたい気持ちも当然あったのですが、キャスト・スタッフ共に完全燃焼したという感が強かった。役者の皆さんもお忙しいですし、金城さんもその他にいろいろな作品の構想がありましたから。でも、このタイミングで続編の放送が決まって良かったなと思いました。

連ドラ版の「BORDER」でみんなが1度振り切って闘い終えて、ラストシーンでは視聴者の皆さんに大きな衝撃を与えた作品ですから、再度冷静に受け止めてもらえる時間が必要だったような気がします。あらためて“その先”が冷静に見られて、キャストもみんなそろっていい状態でやれる、そのタイミングが今だったということですね。

――キャストの皆さんの変化は感じられましたか?

皆さんこの3年でいろいろな役をやられてきたので、正直クランクインするまでは変わってしまっているかなと思っていました。あのラストから直結の物語だからこそ、皆さんがそこに戻ってきてもらえるのかなという不安はあったんです。

でも、もともとすぐれた技術をお持ちの皆さんが、すごく場数を踏まれて経験値が増していたからこそ、クランクインの日には、皆さん確実にその役に合わせて戻ってきてくださいました。

それに直結の表現ができるところまでしっかり戻ってきたのはもちろん、すごくパワーアップして戻ってきてくださって、オーラが増していました。 パワーというか存在感がすごく大きくなったなと、現場で見ていて感じましたね。

小栗旬の“プロ意識”に驚嘆

――実際、一番難しいはずの小栗さんも当時のままに戻られていましたよね。

そうなんですよ。小栗さんとは、一緒に「BORDER」を闘い抜いた“戦友”だったので、終わった後も定期的にコミュニケーションをとっていたんですけど、いざ本当に「BORDER」の続編をやることになったとき、ご本人も「やりたい!」とは言ってくれていたんですけど、あの役に戻るのはしんどいとも言っていまして。

本当にあの当時に戻れるのかなという不安を感じていらっしゃったようです。クランクイン前に連ドラを見返してくださったようなんですが、彼は特にプロ意識が高いので、映像を見て本当に自分がこの役に戻れるかが心配だと思ってしまったようで。

だから「今あなたができることを全部やってくれればそれで絶対大丈夫だから」と励ますことしかできなかったのですが、実際は何の心配もありませんでした。完全に当時の石川に成り切っていたので。よくぞそこまで体重を落としてくれましたし、顔色なんてめちゃくちゃ悪かったですからね(笑)。小栗旬って俳優はやっぱり本当にすごい人だなというのを、現場のスタッフ、金城さん、僕、監督共にクランクインした日に実感しました。

――「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」(フジ系)で体を鍛え抜いた直後でしたもんね。

そうです。ムキムキになっていましたからね。そうやって当たり前のように普通の人には絶対できないようなことをやってのけてくれたので、そこにも注目してほしいです。そんな芸当ができる俳優は、日本では小栗さんくらいだと思いますよ。

■ スピンオフの主役・波瑠のオーラは圧倒的!

――そして、連ドラの「前日譚」を描いたスピンオフに向けて、さらに前に戻る作業が必要だった波瑠さんも大変だったでしょうね。

本当に…波瑠さんは大変大きな存在になられまして(笑)。現場の佇まいも完全に主演女優の経験値を重ねた風格をまとわれているような気がして…(笑)、僕らもちょっとビビっていたんです。ただ、連続ドラマとして走り出した当時からプロ意識が高く、現場でも凛としていて、すごく仕事に誠実に向き合う方という印象でした。

そこは3年たって、朝ドラの主演を張っても全然変わらず、役をきちんと見詰め直して現場にきてくれていたので、何の心配もなく見ていられました。しっかり比嘉の役に戻ってくれていましたし、やり切ってくださいました。当然かもしれませんが、せりふを間違えることなんて一切なくて、本当にすごい風格がありました。

――そのスピンオフも前々から想定されていたんですか?

せっかく3年ぶりに復活することになったので、続編1本だけじゃなくて、他に表現できるチャンスはないかと思っていたんです。そのとき、特別検視官というのは金城さんの「BORDER」の世界観において、金城さんがいろいろ取材した中でこういう役は面白いんじゃないかなとオリジナルで生み出した役なので、深く描いたら面白いだろうなって思いました。

連ドラの6話「苦悩」という比嘉メインの回もありましたが、すごく伸び代のあるキャラクターだなと思っていたので、金城さんとの話し合いの中で「比嘉がなぜ特別検視官になったのかを描くと面白いですよね」という話が出て。せっかくなのでそれをスピンオフにしましょうと。

ちょっとでも「BORDER」シリーズの本数が増えれば、それだけ「贖罪」を盛り上げられますしね。

――スピンオフでも“揺るぎない悪”がいて…。すさまじい内容でした。

あの結末はなかなか予想できないですよね! クライムサスペンスで、あのクオリティーの話を描ける方って今の日本にはあまりいないと思うし、一歩間違えると難しい題材なので、とてもデリケートに、細部まで丁寧に作らないといけませんでした。

そういう作品に挑戦させてもらったので、やりがいがありましたし、見てくれた方々からは評判もすごくいいものを頂きました。

――それこそ清原果耶さんの演技も圧巻でした

あれはなかなか普通の役者にはできないですよね! 彼女もやり切ってくれました。あの作品は、「男社会に立ち向かっていく女性の物語」というテーマがあって。そういう意味では波瑠さんも凛として男社会に立ち向かっていくし、対峙(たいじ)することになる“あの存在”も女性なので。

現場では2人の芝居合戦がすごかったです。せりふは絶対間違えないし、何なら男性陣が圧倒されていましたから。今は女性の方が強いんだな、というのをまざまざ感じましたし、ある種テーマ通りの現場だったなとも思いました(笑)。

■ すごい技術を持った俳優の皆さんに感謝

――「BORDER」シリーズはキャラクターも異色のキャラばかりですね。

僕もいろいろな作家の方とドラマを作らせていただきますが、金城さんのアプローチは他の方と全然違っているんです。やはり直木賞作家ということもあって、物語を自分の中で完璧に構築して、映像の中に生きた人間として登場させられるようにきっちりキャラクターを完成させます。

“掃除屋”にしても、“安藤”にしても、活字上で描かれているキャラクターは完璧に出来上がっているんです。それも、こういうキャラがいたら物語上絶対に面白いはずの。

それをリアルな肌触りで具現化するため、僕らはキャストの芝居であったり、監督の演出であったり、音楽であったりで近づけていく。そこの相乗効果を僕らが担っていると思うんですよ。金城さんが描く活字上の明確なキャラクターを、生きたキャラになったときに損なわないように。

より化学反応を起こせるように、芝居の質であり、映像であり、音楽でありというところで、プロデューサーとしてはしっかり見ている人に届けて、のめり込んでもらえるようなものにしなければと思っています。

それができるように金城さんとセッションをしながらやらせてもらいました。それに、“最悪の敵”である安藤に関しては、大森南朋さんだからこそやり切れたのだと思います。

BORDERは、大森さんをはじめ、本当にすごい技術を持った俳優の皆さんに感謝しなければいけないですし、彼らの表現力のおかげで作品がここまで昇華されたのかなと思います。

――「贖罪」では赤井(古田新太)にしろ、サイモン(浜野謙太)&ガーファンクル(野間口徹)にしろ、スズキ(滝藤賢一)にしろ、決して群れない人だと思っていた人たちが、最強のカルテットを形成しましたね。

脚本を読んで思ったのは、主人公の石川が“極限”までいってしまったからこそ、“闇のカルテット”たちも初めて協力し合えるんですよね。主人公ありきの話で、石川安吾という強烈なキャラクターに対するシンパシーというか、彼への思いで今回のように動く、という。

手前味噌ですが、だからこそ感動するんだと思います。普段はつるむことなんて絶対にあり得ない人たちですから。闇のカルテットが“思い”によって動いている、ということが伝わってくれればうれしいですね。

――連ドラの7話ではその皆さんが石川を突き放すという描写もありましたね。

そうなんです。あのときは単純に石川が、違法捜査だけの人間に堕ちようとしていて、それを彼らは彼らなりの強引な手段で突き放し、止めようとした。それはやっちゃ駄目なんだよって教えてあげたんですよ。ただ、そこに本当の悪・安藤という存在が出てきたことによって、彼らですら石川の選択はそれ(違法捜査)しかないと思わざるを得ない。石川に対する闇のカルテットの思いがあってこその決断なんです。そういうドラマティックな展開もちゃんと計算されている。というか、金城一紀さんの脚本は本当にすべてが計算されているんですよ(笑)。

■ プロデューサーとしてはビビることも

――恐ろしい作家さんですね!(笑)

そうなんです!それを芝居する出演者が全部汲んでやってくれました。たとえば、「贖罪」でのスズキのせりふで「何があってもかけつけます」って、電話を切るシーンがあるのですが、前作の最終回から石川に対する思いの表情が繋がっていて本当に素晴らしい。金城さんの思いが脚本を通じてキャストに完璧に伝わっているんです。

いい楽譜があると、演奏する人たちが生きるんだと思います。このドラマには素晴らしい演奏家がそろっているので、プロデューサーとしてはビビります(笑)。いい演奏家がそろっていて、いい楽譜があったら、プロデューサーとしては幸せな瞬間でもあるんですけど、相当なプレッシャーですからね。

【「BORDER 贖罪」放送直前! 山田兼司Pが語る「BORDER」の“これから” へ続く】