『銀魂』の実写版は何故こんなにヒットしたのか


『銀魂』の実写版は何故こんなにヒットしたのか | dmenu映画



(C)空知英秋集英社 (C)2018 映画「銀魂2」製作委員会


人気漫画の実写映画化として大成功を収め、2017年度の実写邦画興行収入でNo.1(※)を記録した『銀魂』。映画化される背景に原作の面白さがあるのは当然だが、大きな関心の一つに、「あの『銀魂』が、どのように実写化されたのか」があった。単行本の累計発行部数が5,500万部を超える人気作品で、多くの原作ファンがいるため、公開前から注目は集めている。しかし、彼らを納得させつつ、さらに原作を知らない新たな層も楽しませることは容易ではなかったはずだ。
最新作『銀魂2 掟は破るためにこそある』が遂に公開となり大ヒットを記録する中、改めて実写『銀魂』が、何故大ヒットしたのかを振り返ってみる。
監督の作風が原作とマッチした


(C)空知英秋集英社 (C)2018 映画「銀魂2」製作委員会

実写映画化成功の最大の要因は、やはり本作で監督をつとめた福田雄一の存在だろう。
彼は自身の知名度を一気に全国に知らしめた『勇者ヨシヒコ』シリーズ(2011年〜)の他に、映画『HK 変態仮面』(2013年)や、『俺はまだ本気出してないだけ』(2013年)、TVドラマ『アオイホノオ』(2014年)など、漫画原作の実写化を多数手掛け、さらには様々なバラエティ番組の構成作家も手掛けている。
その実績もあり、実写化がアナウンスされる以前から、『銀魂』の監督にはギャグ演出やパロディ演出に長けた福田を推す声は多かった。
空知も福田監督について、「『勇者ヨシヒコ』は、コスプレ感丸出しながらも、そんなのお構いなしで物語に引き込み爆笑を誘ってしまう剛腕振りを見た時から、嫉妬からこのオッさん死んで欲しいなと思っていた」とコメントしているとおり、『勇者ヨシヒコ』シリーズは低予算の深夜ドラマということを逆手に取り、あえてチープな『ドラゴンクエスト』のパロディと、緩い笑いで多くのファンを獲得した。
漫画『銀魂』でもギリギリを攻めるパロディ表現は多くあるが、実写映画版に加えられた原作にはない福田監督によるパロディ演出や、ノリボケ漫才などのオリジナル演出も秀逸だった。中でも福田組の常連であるムロツヨシが登場するシーンでは、“そこまでやっていいのか!?”と、心配になるほどのパロディ演出が展開。観客を大いに笑わせた。
振り切った豪華キャスト陣


(C)空知英秋集英社 (C)2018 映画「銀魂2」製作委員会

漫画原作の実写化で、最も難しいのはキャスティングだろう。小説のように文字だけで表現された世界とは違い、すでに完成しているビジュアルがあるため、原作と比較されてしまうのは仕方のないこと。
しかし『銀魂』は、主役の坂田銀時を演じた小栗旬をはじめ、菅田将暉や橋本環奈など、ぐうの音も出ないほどの豪華なキャスト陣が、可能な限り原作に寄せたことで、再現度が高いと原作ファンから高評価を得た。さらに脇を彩る面々の姿も原作のイメージに沿った姿でスクリーンに現れ、役者の個性がプラスされたキャラクターたちが、スクリーンの中で生き生きと暴れまわっている。また、アニメ版で吉田松陽の声をつとめた山寺宏一が、実写でも吉田松陽を演じるサプライズも用意されていた。今回のdTVドラマ『銀魂2-世にも奇妙な銀魂ちゃん-』でも、アニメ版で“マダオ”こと長谷川泰三の声をつとめた立木文彦が同役を演じる。
演出面でも、銀時らが繰り広げるカッコいい殺陣シーンはもちろんのこと、福田監督の真骨頂であるギャグシーンに抜かりはない。橋本環奈に白目を剥いて鼻をほじらせたり、歌舞伎俳優の六代目中村勘九郎を全身蜂蜜まみれにしたうえに、ふんどし一丁の姿で走らせるなど、ファンの間でも福田演出の本気ぶりが話題になった。
福田演出に豪華キャスト陣が体当たりで挑む“本気”の姿を存分に楽しめることが、実写版『銀魂』が多くの人に受け入れられた要因の一つと言って良いだろう。
最新作『銀魂2 掟は破るためにこそある』でも、本予告編から察する限り、福田監督の手腕は存分に発揮されている様子。前作からさらにパワーアップした豪華キャスト陣による、掟破りのギャグ演出に要注目だ!


文=SS-Innovation.LLC
※…一般社団法人日本映画製作者連盟発表