小栗旬 劇団☆新感線「髑髏城の七人」記事より。。

http://www.asahi.com/showbiz/stage/theater/TKY201109160202.html

小栗 ひりひりする若さ 劇団☆新感線「髑髏城の七人」に挑む

2011年9月17日10時26分


小栗旬=及川智子撮影

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 守らず恐れず、突っ走る。それが若さの特権ならば、東京・青山劇場で上演中の劇団☆新感線「髑髏(どくろ)城の七人」の舞台に、はじける心はまさに「ワカドクロ」。21年前の初演以来、7年ごとに練り直し、熱狂的ファンを持つ名作3度目のリメークに、28歳の小栗旬を迎え入れ、完成されたイメージを根底から覆す覚悟でぶつかっている。

 織田信長亡き後、彼に尽くしてきた捨之介(小栗)と天魔王(森山未来)、蘭兵衛(早乙女太一)の再会を描く。捨之介と天魔王の一人二役を、初演・再演共に古田新太が演じ、再々演では古田主演で人間の業が渦巻く「アカドクロ」、市川染五郎主演で華麗な「アオドクロ」を連続上演。劇団最高傑作との評価を決定づけた。

 今回は捨之介と天魔王が共に信長の影武者だった設定も一人二役の大枠も外した。「今に通じる、若者のひりひりする話にした」と脚本の中島かずき。結果、蘭兵衛含む3人が、信長を崇敬する元同志の過去を持つことになった。

 カリスマを失った若者はどうなるか。暴走する天魔王、共に死にたいと願う蘭兵衛。「ヒトラー・ユーゲントオウム真理教。イメージが重なった」と演出のいのうえひでのりは語る。最も変化したのは捨之介だ。古田版は猥雑(わいざつ)な色気のヒーロー。だが小栗版は悩み迷い、もがく青年。描かれるのは一人の超人ではなく、仲間との信頼が生み出す集団の力だ。それは若返った役者の群像にも重なる。

 8月の大阪公演の反響は「賛否両論」といのうえは苦笑する。「でもこれが今、描きたい人間的な捨之介。若いね、との言葉を最高の評価と受け止める」。中島は「30年を超えた劇団だが、まだ壊せる、挑戦できると示せた」と満足げだ。「走り続けてるから腐らない。足が速い劇団なので、ね


■「足りなさに気づく」

 小栗旬は、「捨てたと言いつつ何も捨ててないのがキモ」と捨之介を語る
分析は深い。「信長の下で一番、殺戮(さつりく)や悲劇を見てきた男。原動力は罪悪感だと思う

 本格的な殺陣は初めてだ。「自分の立ち回りを探り、見つける繰り返し」。プレッシャーもある。「でも脚本も設定も違う。古田さんにも、おいらとは違うからなと言われた。自分の捨之介を一生懸命やるだけだ」。虚無感を抱え、人生を捨てきれず迷い苦しみ、不器用な愛をぶつけてくる少女には切ないほど優しい。ほろ苦い若さがひりひりしみる、中島やいのうえが望む通りの捨之介だが「(大阪では)マイナス意見も耳にした」と率直だ。「聞くようにしてるんです。足りない部分がわかるから。そりゃへこみますけどね

 背景には早くから主役を張ってきた自己への省察がある。「できないこと多いのにね。恵まれた自分と戦い、“小栗旬”に追いつく作業を必死にやってる感じかな」。少し前までは自信満々だったんだけど、と笑う。今は、「やればやるほど足りなさに気付く」。蜷川幸雄劇団☆新感線。同年代の役者がうらやむ舞台で鍛えられ、道の険しさが身にしみている。「調子に乗ってる場合じゃない。死ぬ前に会心の仕事が何本かできれば、それが幸せなのでしょうね

 10月10日まで、1万2500〜1万500円。
電話0570・00・3337(サンライズプロモーション東京)。
(西本ゆか)